【2024年版】EC化率とは?最新データで見る日本と世界の現状、今後の展望を解説
- 2025.01.15
- EC
スマホの普及によってオンラインでの購買行動が手軽にできるようになった今、ECで商品やサービスを購入する消費者が増えています。実際にECがどのくらい普及しているかを把握し、自社のEC施策を検討したい企業は多いでしょう。 今回はEC化率について、最新データで見る日本と世界の現状や今後の展望を解説します。本記事を読めば、国内外のEC化率を把握してスムーズに事業戦略を組み立てられるでしょう。
EC化率とは
EC化率とは、「企業や業界全体の売上の中で、EC(電子商取引)による売上が占める割合」を指します。EC化率は、消費者がどれだけオンラインで商品やサービスを購入しているかを示すデータです。 EC化率が高いということは、消費者が自社の商品をオンラインで購買する傾向が強いことを示しています。このようなケースでは、企業はオンラインマーケティングやECサイトの拡充に注力することで、効率的に売上を伸ばすことができるでしょう。 一方で、EC化率が低いということは、実店舗の売上比率が高いことを示しており、地域性や商品特性に応じたオフラインでの販売戦略が必要です。 EC化率を正しく理解して活用すれば、企業は顧客行動の変化を捉えやすくなり、効率的な販売チャネルの構築が可能になります。
EC化率の計算方法
EC化率の計算はシンプルで、次のような公式を用います。
- EC化率(%)=(EC売上 ÷ 全体売上)× 100
たとえば、1ヵ月の全体売上が1,000万円で、そのうちECによる売上が300万円だった場合、EC化率は次のように計算されます。
- (300万円 ÷ 1,000万円)× 100 = 30%
EC化率を計算すれば、自社におけるEC事業の拡大の度合いや他社との競争力を客観的に評価することが可能です。また、EC化率の定期的なモニタリングは、消費者の購買行動の変化や自社のマーケティング施策の効果を確認する手段として活用できます。
市場(BtoC,BtoB,CtoC)のEC化率の現状
EC化率は市場の種類によって異なる特徴を持ち、各分野で特有の課題や成長機会があります。ここでは、BtoC(企業から消費者)・BtoB(企業間)・CtoC(消費者間)の3つの市場におけるEC化率の現状を解説し、違いや特徴を見ていきましょう。
BtoC事業のEC化率
BtoCとは、企業が一般消費者に商品やサービスを提供する取引形態のことです。EC市場では、衣料品・家電・日用品など幅広い商品カテゴリがBtoCに該当します。経済産業省の報告によれば、物販系分野のEC化率は、2014年の4.37%から右肩上がりに上昇し、2023年には9.38%に達しています。
【参考】令和5年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省
特に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、消費者のオンライン購買へのシフトが加速し、多くの企業がECサイトの構築やオンラインストアでの販売促進に力を入れるようになりました。 また、スマートフォンの普及や配達サービスの充実により、BtoCのEC化率は今後も安定した成長が期待されています。 企業にとって、顧客のニーズへ迅速に対応できるECの強化は不可欠です。
BtoB事業のEC化率
BtoBとは企業間で行われる取引で、原材料の調達や企業向けソフトウェアの提供などが具体例として挙げられます。経済産業省の報告によれば、2019年の31.7%から右肩上がりにEC化率が上昇しており、2023年には40.0%と非常に高い割合に達しています。
【参考】令和5年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省
BtoB市場ではインターネット上での取引が多くの割合を占める業種が多いため、販売を伸ばすためにはECでのアプローチが非常に重要です。
CtoC事業のEC化率
CtoCとは消費者間で直接商品やサービスを取引する形態で、フリマアプリやオークションサイトなどが典型的な例です。CtoC市場は、スマートフォンアプリの普及や個人間での簡単な決済手段の拡大により急速に成長しています。 CtoC分野はインターネットでの取引を前提としているため、経済産業省の報告でもEC化率は算出されていません。ただし、CtoCの市場規模は着実に拡大しています。経済産業省の報告によれば、2023年のCtoCの市場規模は2兆4,817億円にのぼるとされ、前年から5.0%の伸び率となっています。
【参考】令和5年度電子商取引に関する市場調査|経済産業省
さらに、サステナブルな消費を求めるトレンドが追い風となり、CtoC市場はリユースやリサイクル商品の取引の場としても注目されています。これらの背景から、CtoC市場のEC化率は今後も成長が見込まれます。
業種別に見るBtoC事業のEC化率・市場規模
業種別に見ると、EC化率は業種ごとに大きな差があるのが現状です。どの業種がどの程度EC化が進んでいるかを理解することで、現在の市場トレンドや将来的な成長分野を予測できます。 ここでは、EC化が進んでいるもしくはECが前提となっている3つの分野「物販系分野」「サービス系分野」「デジタル系分野」のEC化率・市場規模について解説します。
物販系分野
物販系分野とは実際に商品を販売する業種を指し、具体例としては衣料品・家電・食品・家具などが挙げられます。物販系分野はEC化率が最も進んでいる分野の1つであり、多くの消費者がオンラインでの購買を選ぶようになっています。 経済産業省の報告によると、商品分野ごとの市場規模・EC化率は以下のとおりです。
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分類 | 2022年 市場規模(億円) | 2022年 EC化率 | 2023年 市場規模(億円) | 2023年 EC化率 |
---|---|---|---|---|
① 食品、飲料、酒類 | 27,505 | 4.16% | 29,299 | 4.29% |
② 生活家電、AV機器、PC・周辺機器等 | 25,528 | 42.01% | 26,838 | 42.88% |
③ 書籍、映像・音楽ソフト | 18,222 | 52.16% | 18,867 | 53.45% |
④ 化粧品、医薬品 | 9,191 | 8.24% | 9,709 | 8.57% |
⑤ 生活雑貨、家具、インテリア | 23,541 | 29.59% | 24,721 | 31.54% |
⑥ 衣類・服装雑貨等 | 25,499 | 21.56% | 26,712 | 22.88% |
⑦ 自動車、自動二輪車、パーツ等 | 3,183 | 3.98% | 3,223 | 3.64% |
⑧ その他 | 7,327 | 1.89% | 7,391 | 1.91% |
合計 | 139,997 | 9.13% | 146,760 | 9.38% |
特に市場規模が大きいカテゴリとして「書籍、映像・音楽ソフト」や「生活家電、AV 機器、PC・周辺機器など」があります。一方で、食品や飲料などの分野ではEC化率は5%未満にとどまっていますが、生鮮食品のオンライン配送サービスの普及などで今後の成長が期待されます。
サービス系分野
サービス系分野とは、商品ではなくサービスそのものを提供する業種です。代表的な例として、旅行・宿泊、交通チケット、飲食予約などがあります。サービス系分野はECでの取引を前提としているため、経済産業省の調査ではEC化率の算出対象ではありません。ただし、市場規模は下記表のように年々拡大傾向にあります。
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分類 | 2022年 市場規模(億円) | 2023年 市場規模(億円) |
---|---|---|
① 旅行サービス | 23,518 | 31,953 |
② 飲食サービス | 6,601 | 8,165 |
③ チケット販売 | 5,581 | 6,658 |
④ 金融サービス | 7,557 | 8,483 |
⑤ 理美容サービス | 6,139 | 6,854 |
⑥ フードデリバリーサービス | 5,300 | 5,868 |
⑦ その他(医療、保険、住居関連、教育等) | 6,782 | 7,189 |
合計 | 61,477 | 75,169 |
コロナ禍が落ち着いた影響もあり、外出需要が増えているため、特に旅行・飲食サービスが大きく市場規模を拡大させています。
デジタル系分野
デジタル系分野は、ソフトウェア・ゲーム・音楽・動画など非物理的な商品やサービスを提供する業種です。デジタル系分野もインターネットでの取引を前提としており、経済産業省の調査ではEC化率の算出対象となっていません。ただし、市場規模はサービス系分野と同様に堅調に市場規模を拡大させています。
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分類 | 2022年 市場規模(億円) | 2023年 市場規模(億円) |
---|---|---|
① 電子出版(電子書籍・電子雑誌) | 6,253 | 6,683 |
② 有料音楽配信 | 1,023 | 1,165 |
③ 有料動画配信 | 4,359 | 4,717 |
④ オンラインゲーム | 13,097 | 12,626 |
⑤ その他 | 1,242 | 1,316 |
合計 | 25,974 | 26,506 |
特に、音楽や動画の分野ではサブスクリプション型のサービスが主流となり、年々ECでの市場規模を拡大させている傾向です。
日本と世界のEC動向の推移と違い
国内ECの動向がわかったところで、視野を広げて世界のEC市場について考えてみましょう。ここでは、世界のEC市場規模や日本と世界の違いについて詳しく解説します。
世界のEC市場規模
世界のEC市場は近年、急速な成長を遂げています。総務省によれば、2023年の全世界におけるBtoCのEC市場規模は約821兆円と推定され、2027年まで引き続き成長が見込まれています。 成長の背景には、インターネット人口の増加やスマートフォンの普及が大きく寄与しています。 また、EMARKETERの調査によれば、地域別に見るとアジア太平洋地域が最も大きな市場で、2021年にはデジタル小売売上高が約2兆9,920億ドルに達しています。この規模は北米の3倍以上、西ヨーロッパの約5倍の規模です。世界全体で消費のEC化が進んでおり、特にアジア太平洋地域が成長を牽引しています。
参考:These are the top global ecommerce markets|EMARKETER
世界のEC市場と日本のEC市場
EMARKETERの調査によれば、国別に見ると中国が世界最大のEC市場であり、2021年には小売売上高の45.3%がオンラインでの取引でした。続いて、イギリスが35.9%、韓国が30.1%となっています。 一方、日本のEC化率は上記の国々と比較するとやや低いものの、着実に成長しています。特に、越境ECの分野では日本企業が海外市場に進出する動きが活発化しており、国内市場の拡大とともに注目されている状況です。上記のように、各国のEC化率や市場規模には差異があり、各国の消費者行動や市場環境が影響しています。
参考:The global ecommerce share breakdown|EMARKETER
関連記事:越境ECとは?メリット・デメリット、始め方、注意点などまとめて解説
EC化率が上がっているのはなぜ?その要因と課題
日本および世界のEC化率は、いずれも上昇傾向にあります。消費者の購買行動がオンラインにシフトしていることや、企業がEC事業に注力していることが主な要因です。 しかし、成長の背景にはさまざまな要因が絡み合っており、課題も存在します。ここでは、EC化率を押し上げる要因と付随する課題について詳しく解説します。
スマートフォン環境の向上によるECサイトの利用の増加
スマートフォンの普及率が世界的に上昇しているうえ、通信速度の改善(4Gや5Gの導入)やモバイルデータプランの充実でECサイトの利用が大幅に増加しています。また、サイトの軽量化やアプリの利便性向上により、消費者がストレスなく買い物できる環境が整ってきた点も大きな要因です。 しかし、利便性が向上する一方で課題もあります。たとえば、セール時やチケット発売開始のさいに「特定の時間帯にアクセスが集中してサイトがダウンする」「スムーズな決済が行えない」などの問題です。課題を解決するためには、システムの拡張性や高負荷に耐えうるインフラの整備が求められています。
新型コロナウイルスによる需要増加
新型コロナウイルスの感染拡大によって、外出自粛や実店舗への足が遠のく傾向が顕著になりました。結果として、家庭で購入可能なECサイトへの需要が急増しました。特に、食品・医薬品・生活必需品のオンライン購入が大幅に増えたことは、EC市場の拡大を後押ししたといえるでしょう。 一方で、上記の状況は顧客が多くの選択肢を持つようになったことを意味します。商品の価格や品質だけでなく、配送スピードやカスタマーサービスなども比較検討されるようになり、企業にとって競争が激化する課題が浮き彫りになりました。差別化を図るためには、付加価値のあるサービス提供が求められます。
電子決済やクレジットカードなどの現金でない支払いへの抵抗の減少
スマートフォンの進化とともに、クレジットカード・QRコード決済などの電子決済手段が普及しました。決済手段の豊富さにより、消費者が現金を使わない支払い方法に抵抗を感じなくなり、ECサイトの利用頻度が高まっています。 企業側も決済手段を多様化して顧客満足度を向上させていますが、電子決済の普及にはセキュリティ対策が不可欠です。顧客情報を保護するための仕組みや不正利用を防ぐための技術的な対策の強化が必要です。
テレワークによる在宅時間の増加
テレワークの普及で在宅時間が増加し、自宅での荷物の受け取りが容易になったため、EC利用への抵抗感が薄れた点もEC化率の上昇要因です。特に、時間指定配送や即日配送など利便性の高いサービスが支持を集めています。 ただし、テレワークが広がる中で、配送業界の労働環境や物流効率の向上が求められています。消費者が求める即時性とコスト削減の両立が課題となっており、企業にとって物流システムの改善が競争力強化の鍵を握っています。
配達における課題への取り組みの増加
宅配業界では、人材不足や配送コストの上昇といった課題が長年の懸念事項です。しかし、最近では「置き配」や「コンビニ受け取り」、専用ロッカー配送などの新しい配達方法が普及して課題解決が進んでいます。 配達面の整備により、消費者が手軽に商品を受け取れる環境が整い、EC利用を後押ししている状況です。ただし、上記の取り組みは配送効率を高める一方で、セキュリティや荷物の盗難防止策が必要となる課題も伴います。 今後、より高度な物流管理システムや消費者が安心して利用できる仕組みの構築が期待されます。
今後の予測と企業がとるべき戦略
人材不足や土地・店舗のコスト増加が続く中、EC化への動きは今後も加速していくと予測されています。ここでは、加速するEC化に対応するために企業がとるべき具体的な戦略について解説します。
ユーザー体験の向上
EC市場の競争が激化する中、企業が顧客を獲得して維持するためには優れたユーザー体験を提供しなければなりません。優れたユーザー体験の一例として、SNSからECサイトへのシームレスな購買体験があります。 たとえば、InstagramやTikTokなどのSNSプラットフォーム上で商品の情報を得たユーザーが、ワンクリックで購入できる仕組みは購買意欲を高めるのに効果的です。 また、ECサイト自体の利便性も重要で、ページの読み込み速度の速さ・直感的で操作しやすいデザインなどが購買率を大きく左右します。 さらに、迅速な配送やアフターサポートなど購入後の体験も顧客満足度を高める要因です。 課題としては、多様化する消費者ニーズに応じた柔軟な対応や技術革新への迅速な追従が挙げられます。課題を解決するためには、継続的なユーザー行動の分析やテクノロジーの積極的な活用が求められます。
OMO戦略の推進
OMO(Online Merges with Offline)戦略とは、オンラインとオフラインの両方の強みを活かして統合的に顧客体験を向上させる戦略です。具体的には、実店舗での購買履歴や顧客行動データをオンライン上で活用し、個々の顧客に最適化されたサービスを提供する取り組みが挙げられます。
OMOを取り入れれば、実店舗で試着した商品をECサイトで購入できる仕組みや店舗で受けられる接客と同様のサービスをオンラインでも提供が可能です。ECサイトでも実店舗と遜色ない買い物体験を提供でき、ECでの販売を大きく押し上げられます。 OMO戦略を成功させるためには、オンラインとオフラインでのデータ連携が不可欠です。一方で、データの収集や統合にはコストや技術的な課題が伴うため、効率的なデータ管理システムの構築が鍵となります。
データに基づくマーケティングの最適化
データに基づいたマーケティングは、現代のEC市場において欠かせない要素です。消費者の行動履歴や購買パターン、検索キーワードなどのデータを分析すれば、適切なターゲティングやプロモーションが可能になります。 たとえば特定の時間帯に購買意欲が高まる顧客に対して、タイムリーにクーポンを配信する施策などが挙げられます。購入履歴に基づいたレコメンド機能を活用すれば、効率的に売上の最大化が可能です。また、データに基づいて運用の目的を明確化し、自社のEC戦略が本当に効果を発揮しているかどうかを検証することも重要です。 課題としては、データを適切に収集・活用するための人材不足やプライバシー保護への配慮が挙げられます。企業は最新の分析ツールやAI技術を導入するだけでなく、データ活用に関する透明性を確保して消費者の信頼を得る必要があります。
今後も伸び続けると考えられるECへの需要に適切に対応しましょう
EC化率およびEC市場は、今後もさらなる成長が見込まれています。一方で、競争が激化する中で自社が何を目的とし、どのような層に向けた施策を展開するのかを明確にすることが重要です。 EC事業の成功にはユーザー体験の向上やデータ活用による的確なマーケティング、そしてOMO戦略の推進が欠かせません。上記の取り組みにより、変化する消費者ニーズに柔軟に対応して競争優位性を確保できます。
また、ECでの販売促進の一環として、「Omni-Base for DIGITAL'ATELIER」を活用するのも効果的です。「Omni-Base for DIGITAL'ATELIER」は、EC事業に関わる業務を幅広くサポートするシステムです。受注管理や仕入~出荷におよぶバックオフィス機能や販売促進などあらゆるEC関連業務を効率化できます。 特に、店舗とECの在庫管理を1つのシステムで一元的に管理できるため、在庫切れなどのリスクを抑えて販売機会の損失を防げます。メルマガ機能・クーポン機能も備えており、販売促進施策を効率的に実施することも可能です。 ECでの売上拡大を図りたい場合は、ぜひ「Omni-Base for DIGITAL'ATELIER」をご検討ください。