ECサイトにはどんなABテストが効果的?

  • 2025.01.15
  • EC

ECサイト上の申し込みや資料請求などのユーザーアクションの数を改善する手法として、ABテストがよく用いられます。しかし、実際にどのようにABテストを実施すべきか悩んでいる方も多いでしょう。 ECサイトでABテストを実施する際には、仮説を立ててクリエイティブの改善を行うなど、いくつかのポイントを押さえる必要があります。また、ユーザーの心理状況はABテストだけでは評価が難しいため、代替手段を併用することも重要です。 今回は、ECサイトのABテストの実施手順・効果的なABテストの例などを紹介します。ABテストの限界や代替手段についても解説しますので、ECサイトを改善して売上拡大を図りたい方はぜひ参考にしてください。

ABテストとは

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ABテストとは、ウェブサイトやアプリの特定要素を2つ以上のバリエーションに分け、パフォーマンスを比較するテスト方法です。 たとえば、ボタンの色・テキストの文言・画像の配置などの要素を変更した場合、どのパターンがより多くのクリックやコンバージョンを生むのかをデータで確認できます。 ABテストの目的はユーザーの反応を分析し、より良い結果を得るための最適な選択肢を見つけることです。科学的なアプローチを用いて感覚や勘だけでは判断できない要素を明確にし、効果的な改善を実現できます。

ABテストの重要性

ABテストは仮説を検証し、データに基づいた意思決定を可能にする重要な手法です。特に、ユーザーの行動やニーズは企業やプロダクトごとに異なるため「やってみなければ分からない」要素が多く存在します。そのため、実施するWEBマーケティングの施策をABテストで段階的に改善を重ねていくプロセスが不可欠です。 ABテストを活用すれば「ユーザーがどのボタンをクリックしやすいのか」「どのデザインが直感的に理解されやすいのか」などの詳細なデータを収集できます。結果として、ユーザーの満足度向上やコンバージョン率の改善といった具体的な効果を期待できます。 さらに、ABテストのもう1つの大きな利点は、失敗のリスクを最小限に抑えながら新しい施策を試せる点です。サイトの一部の機能のみを対象にテストを行えば、大規模な変更による悪影響を防ぎつつ有効な改善案を段階的に適用できます。

ABテストの基本的な流れと注意点

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ABテストは単に異なるパターンを比較するだけでなく、計画的かつ体系的に進めることが重要です。ここでは、ABテストを実施する際の基本的な流れについて見ていきます。各ステップで押さえるべきポイントを理解すれば、より効果的なテストが可能です。

目的とテストの対象について選定を行う

ABテストを始める前に、まずはサイト・アプリの目的を設定しましょう。たとえば、「ユーザー体験(UX)の改善を目指すのか」「コンバージョン率の向上を狙うのか」といった具体的なゴールを決めましょう。 目的が曖昧なままABテストを進めてしまうと、結果を正しく評価できず改善効果が不透明になる可能性があります。 また、目的に応じてテスト対象を選定することも重要です。たとえば、コンバージョン率が低いランディングページの改善を目指す際には、テストする要素を絞り込むことが重要です。

仮説を立てる

目的とテスト対象が明確になったら、次は仮説を立てるステップです。仮説は、現状の課題やユーザー行動の分析に基づいて立てると効果的です。 ユーザーの視線がバナーに向かない場合、バナーの配置を見直すことが重要です。たとえば、現行のページの下部に配置しているバナーが見落とされている可能性があります。この場合、「バナーをページ上部に配置すれば、クリック率が向上するのではないか」という仮説を立てることができます。 仮説は具体的かつ測定可能な形で設定しましょう。以下の手法を用いて仮説の説得力を高めることができます。

  • ヒートマップの活用
    ユーザーがどのようにページを利用しているかを可視化して、説得力のある仮説を構築できます。

クリエイティブを制作する

仮説が決まったら、具体的なクリエイティブ制作に進みます。なお、クリエイティブ制作の段階では、現状のデザインやテキストを「A」・仮説に基づいて変更したものを「B」とするのが一般的です。 ボタンの色を青から赤に変更したり、テキストの文言を「申し込む」から「今すぐ登録」に変えたりして、具体的なクリエイティブの変更を行います。
注意すべき点は、検証する仮説は1つに絞ることです。複数の要素を同時に変更してしまうと、「どの変更が効果を生んだのか」の判断が難しくなります。また、変更による影響範囲を明確にするために、ほかの要素には手を加えないようにしましょう。

効果を分析する

最後に、AとBのどちらのパターンがより優れた成果を上げたのかを分析します。成果を分析するプロセスでは、あらかじめ設定したKPI(重要業績評価指標)を基に結果を評価します。
たとえば、クリック率・コンバージョン率・滞在時間など、サイトやアプリで達成したい目的に応じて指標を選定しましょう。効果分析を通じて得られた結果を基に、次の改善ステップを設計することがABテストの本質です。

効果的なABテスト例

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ここでは、ABテストで特に効果的とされる施策について具体的な例を交えながら見ていきます。各施策の詳細を理解し、実際のテストに生かしましょう。

デザイン関連

デザインの変更は、ユーザーが最初に目にするビジュアル要素に大きく影響を与えます。特に、ファーストビュー画像やバナーのデザインはユーザーの注目を集める重要な役割を果たします。 ABテストでは、以下のようなポイントを比較対象にすると効果的です。

  • 写真とイラストの違い:製品写真を使用するパターンと親しみやすいイラストを使用するパターンを比較する。
  • 色味:全体の配色を鮮やかな色にするパターンと落ち着いた色にするパターンをテストし、クリック率やエンゲージメント率の変動を確認する。
  • フォントの種類:読みやすさやデザイン性に配慮して異なるフォントを試し、ユーザーの印象や行動にどのような影響があるのかを検証する。

デザイン変更をテストし、どの要素がユーザーの興味を引いて購買行動を促進するのかをデータで明らかにできます。

コピーライティング関連

ファーストビューに掲載するコピーはユーザーにとって最初のメッセージであり、重要な役割を担います。コピーライティングを変更し、ユーザーの感情や行動にどのような影響を与えるのかを確認するのがABテストの目的です。具体的には以下のような2種類のコピーを比較するのが有効です。

  • 効果をうたうコピー:「この商品で売上が2倍に!」といったような、直接的なメリットを強調するコピーがあげられる
  • ユーザーの悩みに寄り添うコピー:「作業時間を短縮したいとお考えですか?」といったような、ユーザーの課題を意識したコピーがあげられる

コピーの長さやトーンの違いも重要です。簡潔で力強い表現と、詳細で説得力のある表現のどちらがユーザーに響くのかを比較しましょう。

UI/UX関連

UIやUXの改善は、ユーザーがスムーズに目的を達成できるかどうかに直結します。ABテストでは、レイアウトや導線の変更がどのような影響を与えるのかを検証しましょう。 具体的な例としては以下のような施策があります。

  • 導線の設置:テキストリンクのみで提供している導線を目立つボタンリンクに変更する。ユーザーが直感的にクリックしやすくなり、コンバージョン率の向上が期待できる。
  • レイアウトの変更:たとえば、主要なCTAボタンをページ上部に配置するパターンと下部に配置するパターンを比較する。
  • メニューの再配置:ナビゲーションメニューを簡潔にまとめたり、アイコンを活用して視覚的に分かりやすくしたりする変更も有効。

ユーザーがどのようにサイトを利用しているのかを観察し、データに基づいて変更を加えれば、UI/UXを大幅に改善できます。

コンバージョン関連

最終的な目標である売上や問い合わせ件数など、コンバージョンの改善もABテストの重要な対象です。特に、ユーザーが行動を起こすタイミングやプロセスに注目すれば、大きな成果を得られます。 具体的なコンバージョン改善に関わるABテストとして、以下のような施策例があげられます。

<施策例>

  • 「申込フォームや購入ボタンをフローティングバナーとして画面上に常に表示させるパターン」か「記事や商品の詳細説明欄に複数の申込ボタンを配置するパターン」のどちらがコンバージョン数を増やせるかABテストして比較する

コンバージョン率を改善するためには、ユーザーの心理や行動を深く理解して施策を実施することがポイントになります。ABテストを活用して、ユーザーに最適な体験を提供しましょう。

ABテストの限界と代替対応

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ABテストは分析手法として便利ですが、万能なものではありません。ここでは、ABテストが苦手とするポイントや限界を補うための代替的なアプローチ方法について解説します。

ABテストの限界

ABテストでは、以下のような限界があります。

  • ユーザーの属性など、行動以外の部分(心理側面)の把握が難しい
  • サンプル数が少ないと傾向が見えづらい

ユーザーの属性など、行動以外の部分(心理側面)の把握が難しい

ABテストは視覚的な要素の変更に伴うユーザー行動の変化を計測するには優れています。しかし、ユーザーの心理的な状態や感情までは直接把握できません。 たとえば、「デザイン変更がユーザーに安心感を与えているのか、それとも嫌悪感を与えているのか」といった心理的側面は、ABテストでは測定が困難です。 これにより、「なぜユーザーがその選択をしたのか」という根本的な理由を深掘りするのが難しくなります。そのため、ABテストの結果を解釈する際には心理的側面を補足的に理解できるデータや手法を併用するのが重要です。

サンプル数が少ないと傾向が見えづらい

ABテストは十分なデータ量があってこそ有効な結果を得られます。しかし、ユーザー数が少ない場合や特定のセグメントに限定された場合は、正確な傾向を見いだせません。サンプル数が少ない場合、偏ったユーザー行動に影響されやすいためです。 また、利用者の方が少ない段階でのテスト結果を基に意思決定を行うと、誤った方向性に進むリスクも高いです。この課題を解決するには、データが不足している場合の代替手段を考える必要があります。

ABテストでは難しい情報へのアプローチ方法

ABテストでは難しい情報へのアプローチとして、以下の方法があげられます。

  • ヒートマップによる行動の把握
  • 録画ツールによる操作行動の確認

ヒートマップによる行動の把握

ヒートマップは、ユーザーがサイト上で取った行動や、反応を色の濃淡で確認できるツールです。 たとえば「ページのどの部分が最もクリックされているのか」「スクロールの途中でどの箇所で離脱しているのか」など、詳細な行動データを把握できます。これにより、ABテストの結果を補完し、ユーザー行動の背景を理解するのに役立ちます。 ヒートマップを活用すれば、テスト結果の解釈がより正確になるだけでなく、新たな仮説の構築にもつながります。

録画ツールによる操作行動の確認

録画ツールは、ユーザーが実際に画面を操作している様子を動画で確認できる手法です。録画ツールを使えば「ユーザーがどの操作で迷ったり、つまずいたりしているのか」を具体的に把握できます。 「クリックやスクロールなどの行動がどのように行われているのか」も一目で確認が可能です。 たとえば、重要なCTAボタンに気づかないままページを閉じてしまうユーザーが多い場合、ボタンの視認性や配置を改善するためのヒントを得ることができます。録画ツールは定性的なデータを提供するため、ABテストでは分からない課題を見つける上で非常に有効です。

アンケート調査

ABテストでは、ユーザーの感情や満足度といった定性的なデータの収集が難しいため、アンケート調査を組み合わせてギャップを埋めましょう。 たとえば、新しいデザインを試した後に「操作性に関してどう感じたか」「購入意欲は高まったか」などを直接質問すれば、心理的な側面を定量的に把握できます。 アンケートは、ABテストの結果の背景を理解する上で貴重な情報を提供します。特に、ABテストの結果が僅差だった場合や、特定のパターンが好まれる理由を深掘りしたい場合に効果的です。定性的なデータと定量的なデータを組み合わせれば、より包括的な分析結果を得られます。

まとめ

ABテストはECサイトをより使いやすく、魅力的なものに改善するための重要なテスト方法です。ユーザーの行動や反応をデータとして可視化し、結果に基づいて最適な改善施策を実行すれば、コンバージョン率や顧客満足度の向上を目指せます。また、ABテストは一度きりではなく、継続的に実施してサイトのパフォーマンスを段階的に向上させる効果があります。 ABテストの実施後は、テストで得られた「勝ちパターン」を速やかに適用しましょう。なお、重要なのは単に結果を適用するだけでなく、「なぜそのパターンが効果的だったのか」を分析して次の施策に生かすことです。このサイクルを繰り返せば、ECサイトを進化させ続けて競争力を高められます。

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