ロイヤリティの高いファンの心をつかむ顧客体験とアプリ戦略【前編】

飲食店やアパレルの店舗、教育支援機関や自治体など、さまざまな業界でアプリの活用が広がっています。ノーコードでアプリ開発・運用・分析ができるアプリプラットフォーム『Yappli』は、幅広いジャンルのアプリ開発が可能であり、導入の気軽さ、運用のしやすさから既にアプリ導入実績は840件以上。SNSやWebサイトとは別のアプローチが可能なブランドアプリの特徴とは何なのでしょうか。前編ではロイヤリティの高いファンを作るアプリ戦略について、株式会社ヤプリ・神田静麻氏に伺いました。

消費者のライフスタイルの変化とともに高まるアプリ需要

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導入や運用が簡単に行えるプロダクトに衝撃を受けた

――最初に、神田さんの現在の業務とミッションについて教えてください。

神田静麻氏(以下、神田):私は現在マーケティング本部ブランドコミュニケーション部に所属しています。
皆様に『Yappli』のブランドを認知いただき、アプリ活用を検討いただくことがメインのミッションです。イベントやセミナーの企画や登壇を積極的に行うとともに、導入いただいている企業様の活用事例をコンテンツ化するなど、これから導入を検討いただく方々への訴求を行っています。

――どのような経緯でヤプリに入社され、マーケティングに関わってこられたのでしょうか?

神田:ヤプリ(当時社名:ファストメディア株式会社)へ入社したのは7年半ほど前です。私は前職で楽天やYahoo!ショッピングなどに出店する中小事業者向けの支援サービスを行っていました。その中でヤプリのプロダクトに出会い、各モールよりも圧倒的に楽に、手間なく運用ができることに衝撃を受けました。当時のヤプリの社員数はまだ20~30人ほどでしたが、既にアパレル大手のブランドなども獲得していたことにも可能性を感じたのです。
入社後はまず、インサイドセールス部門の立ち上げを行いました。当時は人数も少なかったのでマーケティング、セールス全員で一緒にイベントや展示会への出展をしていましたが、やはり事前に興味を持っていただける情報を発信することの必要性を感じ、マーケティング側に注力領域を移した形です。

ライフスタイルの変化に伴い、ニーズに対応

――最近では、事業者がそれぞれのオリジナルアプリを作ることも当たり前となりました。アプリの黎明期から今に至るまでの変遷をどのようにご覧になっていますか?

神田:入社した頃はそもそもガラケーの人もまだ結構いましたが、その後スマホの普及が進み、消費者のライフスタイルは大きく変化しました。人が1日のうちにスマホに触る時間が年々伸びているというデータもある通り、通信環境の加速に伴って、スマホでコンテンツを見ることに対するストレスも減ってきました。そのため、ECサイトやアプリを立ち上げることが事業者にとって一般的になりました。
今では、ショップスタッフがスマホやタブレットで在庫チェックをすることは当たり前ですし、DXやペーパーレスの推進など、店舗ビジネスでもデジタル化の流れが起きています。特にコロナ禍以降は、事業者も生活者もデジタル活用にシフトせざるを得ない環境になりました。
その頃から特に、クライアント様がアプリ制作に関してより必要性を感じている雰囲気も、しばしば感じるようになりました。
例えば、アプリが生活者に浸透したことでアプリによるマーケティングがより重要性を増してきた、そのためよりリッチ化していく必要が出てきたなどの課題を抱えているクライアント様が増えてきた印象です。

マーケティングにおけるアプリチャネルの位置づけ

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ロイヤリティが高いファンが集まりやすいため、コンバージョン率が高い

――マーケティングにおいてさまざまなチャネルがある中で、アプリはどういった位置付けにあるのでしょうか?

神田:一言で言えば「ファンが集まりやすい場所」だと思います。ブランドに既に好意を持っている方は、アプリがリリースされればすぐにダウンロードいただくことが多いです。加えてブランドを知らなくても、近い世界観に興味を持っている方やブランドのコンセプトに共感する方など、今後ファンになり得る方に対してもアプローチができます。ブランドに対してなんとなく「いいな」と思っていた方が、アプリを活用することによってロイヤリティを高めたり、ファンになっていだけたりするケースも非常に多くあります。

――他のチャネルとは違う、アプリならではのメリット・デメリットを教えてください。

神田:アプリはスマホ画面にアイコンが表示されるため、ユーザーがワンタップでアクセスできるリーチのしやすさがあります。加えてプッシュ通知で他の通知と混ざらないことは、メールやLINEとは違うひとつの価値です。 また、インスタやXなどのSNSは相互にコミュニケーションが可能でリーチもしやすいのですが、過去の投稿は時間とともに流れていきます。一方でWebサイトは、多くの情報をストックできる反面、お客様に能動的にアクセスしていただく必要があります。その点アプリは、SNSとWebサイトのいいとこ取りができるチャネルだと言えます。

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アプリの活用により、Webサイトのみ運用していた頃よりもPV数が上がったというお話もよく聞きます。アプリは回遊がしやすく、コンテンツを見ていただきやすい設計になっていますし、接触時間が長くなればなるほどコアなファンになりやすく、仕組みとコンテンツの特徴が噛み合っています。
公式アプリからWebのECサイトに誘導するケースを見てみても、Web検索やWeb広告からの流入と比べた際、母数はWeb経由の方が大きくても、アプリの方が圧倒的にコンバージョン率は高いというデータがあります。アプリはブランド認知だけではなく、売上にも貢献できるチャネルなのです。
デメリットは、ダウンロードいただけるのはロイヤリティの高い一定の方であることです。「このアプリはわざわざダウンロードするまでもないか」と、ダウンロード前に判断されますので、アプリのブランディングや提供価値、使用目的はより重要になってきます。

接客時間の長い業界、高単価の商材はアプリ向き

――最近ではさまざまなシーンでアプリが活用されていますが、アプリによるマーケティングが適している業界・業種はございますか。

神田:店舗ビジネスの中で言えば、接客時間が長くなりやすいアパレルやコスメ、インテリアなどの業界は比較的相性が良いでしょう。会計時にも落ち着いた雰囲気づくりができますので、接客フローの流れの中にも組み込みやすく、キャンペーンなどを活用することでスムーズにダウンロードいただくことも可能です。
また、アプリはブランドへのロイヤリティを高めやすいという側面があります。ある程度単価が高く購入のハードルが高めの商材でも、ロイヤリティを高めることでより継続購入を促しやすくなることから、高単価商材とアプリは好相性と言えます。

アプリの開発と運用を円滑にするポイント

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目的に対して最短で開発し、アップデートで精度を高める

――アプリ開発はどのような流れで行われますか?

神田:まずは解消したい課題やアプリをつくる目的をヒアリングさせていただき、目的をクライアント様と一緒に考えることを大切にしています。「売上を上げたい」といった大枠の目的にとどまらず、新規会員を増やしたいのか、顧客単価を上げたいのか、来店回数を増やしたいのかなど、具体的な目的を明らかにし、アプローチ方法と必要な機能を検討していきます。

――企業がアプリの開発をするにあたって、ポイントとなるのはどのようなことでしょうか?

神田:目的をシンプルに絞り、早く80点を取る意識で開発とリリースをすることです。最初にいきなり100点を取ろうと機能を盛り込み過ぎてしまうと「機能は100点だけど、実は使われない機能も多く、ユーザー評価は20点」ということにもなりかねません。
『Yappli』を活用して作成したアプリの場合、アップデートで後からコンセプトや中身を変えることが可能ですし、例えば「○○ペイ」など新たなツールが現れたら、リリース後に対応する必要性も出てきますから、期待値を残すという意味でも、当初から完璧を求めすぎない方がいいでしょう。
私たちは、開発初期に例えば「半年でここまで」という目標をクライアント様と一緒に定め、双方の認識が大幅にずれないように気を付けています。
『Yappli』は開発も運用も簡便さが強みになっていることもあり、既にアプリを運用されていた企業から「フルスクラッチで独自の機能を作り込んだものの、運用が大変」「開発に詳しいスタッフが辞めてしまい、どうすればいいのかわからない」などの事態を脱却できるという理由でお選びいただくケースも増えていますね。

引き継ぎや現場への落とし込みなど、運用体制の構築が肝

――アプリリリース後の運用については、気を付けるポイントはありますか?

神田:開発のフェーズから、運用方法と体制をセットで考えておくことが重要です。どんなに便利なアプリをつくっても、現場の方々の納得感がなければ運用が進みませんから。
また、担当が変わってもすばやく運用ができることも重要ですね。どうしても、コンセプトについての理解や熱量は開発時の担当者が最も高くなります。そのためジョブローテによる役割変更、退職などの理由で担当が変わった場合、引き継ぎを丁寧に行わないと少しずつアプリが衰退してしまうケースがあります。
以前は、企業内にアプリの開発・運用ができる人材が少ない状況もありハードルが高かったのですが、『Yappli』は「触ってみたら意外と簡単だった」と感じていただくことが大半です。スタッフにもメリットを伝えて腹落ちしてもらうことで、社内への普及がより加速すると思います。

インタビュイー紹介

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株式会社ヤプリ

マーケティング本部
ブランドコミュニケーション部
エバンジェリスト
神田静麻さん