ロイヤリティの高いファンの心をつかむ顧客体験とアプリ戦略【後編】

アプリプラットフォームとして企業の活用が広がる『Yappli』では、クライアントとのコミュニケーションを通して、さまざまなニーズをキャッチアップして成長し続けています。前編ではアプリというチャネルの特徴や開発・運用のポイントについて、株式会社ヤプリ・神田静麻氏にお話を伺いました。後編では、アプリ活用の幅の広さや、アプリ起点での売上貢献などについて、実際の事例を用いて語っていただきます。

ブランドへの親近感を深める『Yappli』の特徴

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幅広いモジュール機能とテンプレートのバランスで簡単運用と最適な顧客体験を両立

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――改めて、アプリプラットフォーム『Yappli』の特徴を教えていただけますか?

神田:『Yappli』は、「ノーコードで開発から運用・分析までオールインワン」をコンセプトに、「スピード導入・ラクラク運用・クラウドで進化・サクセス支援」の4つの特徴を持ったプロダクトです。
まずスピード導入について。弊社では仕様書を用いず、ヒアリングしてサンプルを作り、できたものを確認いただいて修正する形で制作します。そのため、最短1か月ほどでの導入が可能です。
運用に関しても、ノーコードですので管理画面で直感的に操作することが可能です。プッシュ通知の送信もSNSの運用のように、手軽に行うことができます。特にデジタルネイティブ世代の方々はかなり慣れてらっしゃいますので、簡単に操作されている印象ですね。
クラウドで進化という意味では、管理画面の中でOSアップデートまで可能である点が強みです。もちろんiOS、Androidともに更新できますし、追加費用もかかりませんのでコスト的にもメリットがあります。
サクセス支援については、カスタマーサービスでコンテンツやノウハウを提供しているのが特徴です。

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――幅広いデザインができるとも伺っています。

神田:いわゆるプラットフォーム型のアプリは、台紙と枠にはめ込む形の仕様であることがほとんどで、どこの会社で作ったか比較的わかりやすいことが多いのがデメリットではあります。『Yappli』の場合、機能はモジュールであるもののデザインは幅広く、飲食店、アパレル、社内向けなど業界や目的ごとのテンプレートを用意しており、それぞれ目的やターゲットに合った顧客体験を実現することができます。

客単価で他チャネル2倍の差も。ブランドへの親近感を深めるコンテンツづくり

――実際に『Yappli』を活用した企業では、どのように工夫してアプリを制作されているのでしょうか?

神田:例えばある仏具企業では、ご自身や親御様の終活にあたり、供養や法事の方法について情報のニーズがあるということで、アプリでのアプローチを検討されていました。
一般消費者にとってなかなか日常生活で触れる業界ではないため、より身近に感じられるコンテンツを一緒に考え、実装しました。毎日アプリを開くことで、仏事用語の解説や「この時期には何をすれば良い」など、年次に応じた情報や豆知識を「おみくじ」という形で提供するようにしたのです。
同様にアロマ業界の企業でも、フレーバーの効能などについて、楽しみながら知識が深まる導線を作りました。ユーザーの親近感を深める施策ができたと考えています。
他にもアパレル企業では、ブランドの世界観の表現としてビジュアルを背景に固定したレイアウトを用いました。ファーストビューでお気に入りやカート、注文履歴など必要な情報をタップできるようにし、ホーム画面に店頭で使う機能を並べたことなども特徴です。エンターテイメント企業では動画の配置、アイコンなども雰囲気や世界観にこだわって制作しています。

――アプリには本当に多様な使い方や可能性があるのですね。成果としてはいかがですか?

神田:特にメーカーや飲食業界はユーザーにアプリをダウンロードしてもらうことで、今まで漠然と把握していた顧客データを得られるようになったことは大きな変化です。どの年代・性別の方が週に何回来店しているかを可視化し、施策に落としている企業もあります。
アプリでは購買データ以外に、よく閲覧される内容が把握できるため分析にも使いやすく、行動データからプッシュ通知やコンテンツ配信等の施策も行えるので、施策の幅も広いのです。
このような取り組みの結果、アプリ経由の購買率は増大し、最近ではオンライン購買全体の30%を占めることも珍しくなくなりました。中には50%を超える企業も出てきており、初めての購入がアプリ経由というお客様も増えています。
もちろん、元々ロイヤリティが高かったユーザーがアプリ購入に移ったこともありますが、コンテンツの配信、リアルタイムでプッシュ通知が届くことなどによって、購入頻度が増加し、1人あたりの購入金額がアップしたことが大きな要因ではないかと考えています。
他のチャネルと比較して客単価に2倍の差がある、定期購入はアプリチャネルが最も多いといった事例もよく出てきていますね。

――客単価やLTVの向上は、まさにアプリによってコアなファンを作っていることの証左ですね。

神田:はい。特に広告出稿に力を入れている業界のひとつである人材業界では、アプリインストール広告への予算のウエイトが次第に大きくなってきています。こうした広告予算の配分にも影響を及ぼすようになっています。

常にトレンドやニーズを捉え、支援につなげる努力と工夫

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"ひとり担当"を支える「ユーザー会」の存在

――アプリを開発・運用される企業の課題はどのようなところにありますか。

神田:ECもそうですが、アプリ担当の方々は企業によっては"ひとり担当"として運用されていたり、社内の理解を得るために孤軍奮闘されていたりする方も多いです。そのため、孤独を感じやすい印象があります。
『Yappli』導入企業の皆様には、管理画面のレクチャーはもちろん、運用について自習できるサービスサイト、サポートページでQ&Aやコンテンツを用意しており、導入事例や活用ノウハウ、お悩み、機能別の記事などをご提供しています。
さらに「ユーザー会」を頻繁に実施しています。成功事例や新たな使い方の発見ができるだけでなく、同じミッションを持つ方同士で悩みや想いの共有ができるため、非常におすすめです。

――ヤプリ社ではさらに、『Yappli CRM』『Yappli UNITE』など他プロダクトもリリースされています。

神田:『Yappli CRM』は、展示会等で様々な企業と対話する中で、顧客基盤がまだない、あるいはより良くしたいというニーズを受けて生まれました。また、従業員向けに業務効率化やエンゲージメント施策などを行える社内アプリシステムとして『Yappli UNITE』を2023年8月からリリースしています。
アプリであれば、小売りやアパレルなど多拠点を持つ業態でも、各拠点のスタッフ全員に情報を共有しづらいという課題に応えることができますので、これらの需要をパッケージ化しました。どのプロダクトにも共通ですが、面倒くささがあるとユーザーの登録につながらないので、UXには徹底してこだわっています。

リアルな接点でニーズを汲み取り「感動体験」を届ける

――ヤプリ社はどのようなことを大切にされていますか。

神田:アプリというデジタルツールを展開している企業ですが、お客様の声を聞くリアルな接点や地道な活動を大切にしています。会社のバリューのひとつに「感動体験」を掲げており、これは代表や創業期メンバーの原体験に基づく重要な価値観です。
そのためにも、常にトレンドのキャッチアップは大切にしています。個々が外部セミナーで情報をインプットしていくのはもちろん、マーケティング部として社内においても、第一人者の方々からお話を聞く機会を作るなどもしています。
また、福利厚生としてスマホ端末の購入補助制度を設けているので、様々な企業のアプリをダウンロードして、トレンドをつかんだり活用方法のヒントにしたりしています。

――最後に今後の展望についてお伺いします。

神田:お客様がアプリを検討する際にまず、「ヤプリに話を聞いてみよう」と想起いただけることを目指しています。
ヤプリは、アプリを活用して情報を民主化することにより、ブランドへの顧客エンゲージメント強化や売上への貢献のみならず、従業員の離職率の低下や帰属意識を向上などのインナーへのサポートも行っています。お客様と社内、双方にアプリを起点とした施策で支援を続けていきたいです。

インタビュイー紹介

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株式会社ヤプリ

マーケティング本部
ブランドコミュニケーション部
エバンジェリスト
神田静麻さん