持続可能なIT戦略を、パートナーとして共創する
迫りくる「2025年の崖」への対策を考える【後編】

IT人材の不足、基幹システムの老朽化、膨大な運用保守コストという三重苦によって莫大な損失をもたらすと予測されている「2025年の崖」。前編では「2025年の崖」の概要と日本企業が直面する課題について、インダストリーサービス第一事業部 営業二部部長の増田に話を聞きました。後編では、「2025年の崖」を乗り越える手段になりうる、BIPROGYの具体的な取り組みやソリューションについて詳しく聞いていきます。

    増田 勇二
    2001年日本ユニシス(現BIPROGY)入社。
    海外出版流通業、食品業、卸業、物流業、青果市場など数多くの業界への基幹系システムを含むIT支援に取り組み、2014年関西エリアへ異動。大手総合通販業における基幹・EC領域含むIT構造改革を推進。2018年より西日本エリアのEC・通販業全般を管轄する営業責任者に着任、2022年西日本エリアのリテール業を除く流通業全般を管轄。
    2023年より本社へ異動し、BIPROGYにおけるEC・通販全般の主管・営業責任者。ECオムニチャネル事業を支援するSaaS「Omni-Base for DIGITAL'ATELIER(オムニベース フォー デジタラトリエ)」を発表し、EC・通販業界におけるDX推進に取り組む。

「2025年の崖」に対峙する企業にBIPROGYができること

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レガシー化するシステムを「作らない責任」を持つ

――BIPROGYでは、「2025年の崖」に立ち向かう企業に対し、どのようにアプローチされているのでしょうか?

増田:弊社は時代に応じて、ビジネスモデルの転換を進めてきました。例えば長年にわたり展開してきた「SIビジネス」は、お客様からご要望をお聞きしてオーダーメイドでシステムを開発し、対価をいただくビジネスモデルとなっていました。
しかし、人手不足はもちろんシステムに求められることの変化も激しい今、以前のように数百人もSEを揃えて、お客様のお好みのシステムを作るというやり方は時代に沿わなくなってきています。クラウドサービスが主流になった今、人海戦術で大規模なオンプレミスシステムを作ったところで、10年後にそれを維持・メンテナンスし続けることは難しくなってくるのです。
私たちには「作らない責任」もあると思っています。作れば一定のお金をいただけることはわかっていても、作らない。レガシー化しうるシステムを新たに作ろうとするお客様がいたら、長期的な視点や企業競争力の観点そして、安定かつ持続可能なシステムの在り方を考えるための提言をさせていただき、それに代わる方法を提案する。それが私たちの責任だと考えています。

半歩先の未来を考え、変革を続けてきた

――BIPROGYは、お客様に提案する「オファリングビジネス」を大手に先駆けて実施してきています。

増田:約20年前から事業構造の変革を進め、従来のSIビジネスから、オファリングビジネスへと舵を切りました。ただオファリングビジネスは、自社でお勧めできるシステムやサービスを持っていないかぎり、お客様が「じゃあどうしたらいいの?」と困ってしまいます。
そこで弊社では、さまざまな業界に対応できるサービスを用意したうえで提案を進めています。さらにビジネスモデルも、売り切り型から月額のサービス型ビジネスへと移行しています。金融業、社会公共領域、EC通販をはじめとする流通業、製造業など、あらゆる業種業態でサービス型ビジネスを盛り込んでいるのです。これは、持続可能な形でシステムと人的リソースを提供するための変革です。

――なぜそのような取り組みをされているのですか。

増田:弊社のパーパスは、「先見性と洞察力で、テクノロジーの持つ可能性を引き出し、持続可能な社会を創出します」、コーポレートステートメントは「Foresight in sight」です。このメッセージの中に、取り組みの背景が込められています。
先見性と洞察力を持ち、半歩先の未来に何が求められるのか、何をすべきかを考える。そこにテクノロジーを掛け合わせ、社会課題を解決していく企業になる。持続可能で社会課題を解決するサービサーになるという意思を、近年特に強く打ち出しています。

40年間培ってきた知見と資産を注ぎ込んだプラットフォーム

――「2025年の崖」への対策となる、具体的なソリューションはありますか?

増田:その1つが『Omni-Base for DIGITAL'ATELIER』(以下、デジタラトリエ)というEC通販向けのOMO(Online Merges with Offline)サービスです。私たちが40年間培ってきた知見を基に開発された、クラウドベースのプラットフォームとなっています。マーケティングや販売に寄与するフロント部分から、在庫管理や外部ID連携、決済連携などのバックオフィス部分まで、フルフィルメント業務をオールインワンでカバーしています。
実は4~5年前に、それまで40年間培ってきた従来型のECシステムの新規販売を停止し、デジタラトリエに一本化しています。これは会社としての大きな決断でしたが、時代の変化と社会課題に対峙するためには必要な変革だと考え、実行しました。

――デジタラトリエには、どのような特徴がありますか?

増田:デジタラトリエの大きな特徴は、"ノンカスタマイズ"である点です。「システムを業務に合わせてカスタマイズする」のではなく「業務を最新システムに合わせてカスタマイズする」という考え方で、日本のIT投資の課題を解決しようとする意図があります。「業務をカスタマイズする」といっても、お客様の成長にブレーキをかけるようなものであってはなりません。私たちは、お客様が競争力を維持できる、もしくは業務効率化によってさらに成長を加速させられるような世界を見据えてサービスを開発しました。

その他、デジタラトリエの強みは次の3つ。
1. スピード:お客様のニーズにすぐに対応できる豊富な機能を標準で搭載しています。オーダーメイドシステムでは必須の要件定義や開発テストなどの工数が削減されるため、基幹システムの入れ替えも1年半程度で可能です。
2. グロース:機能が自動的にバージョンアップされ、最新の状態が維持されます。お客様側の追加投資なしに、新しい決済方法への対応、法改正対応などを行います。バージョンアップは四半期に一度で、毎年4月には開発ロードマップをお客様にお伝えしています。
3. リリーフ:運用保守やセキュリティ対応など、システム管理の多くの部分を弊社が担当します。ECサイトのセールやキャンペーンなど、繁忙期のサーバー増強も弊社で対応を行い、サイトにアクセスできないといったトラブルを防ぎ、お客様の売上機会を確保します。

OMOプラットフォーム「デジタラトリエ」が実現する世界

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通販事業に長年携わってきた老舗だからこそできるサービス

――OMOへはどのように対応できるのでしょうか?

増田:デジタラトリエは「OMOプラットフォーム」とも呼んでおり、オンラインとオフラインの境界をなくし、ユーザーに一貫した購買体験を提供することを目指しています。例えば、「オンライン上で見て気に入った商品を店舗で購入する」「店舗とECの在庫を共有・管理する」「複数のブランドでのID統合などの柔軟な運用」などが可能です。
このような機能は、ユーザー側から見れば当たり前にあってほしいものなのですが、実際にはバックエンドで複雑な処理や高度な在庫情報のハンドリング技術が必要になります。これを実現できるのが弊社の強みであり、それをオールインワンで対応できる点がデジタラトリエの強みでもあります。

――従来のECシステムとはかなり違う仕組みですね。

増田:私たちは、まだインターネットが普及していない、カタログ通販の時代から通販事業のシステムに携わっている"老舗"です。注文ツールとしてのカタログがあったところから、ECの黎明期を経て、今までの変遷を見てきています。長年、通販業界の基幹システムを扱ってきて、業界に関するビジネス解像度が高いからこそ、高度な機能を実装することができているという自負があります。
例えばコロナ禍でオンラインショッピングが一気に普及しましたが、現在はオンラインの便利さを享受した上で、実店舗での体験も求めるようになっています。その両方のニーズに応えられるのが、我々のOMOプラットフォームなのです。

「2025年の崖」を乗り越えるために

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企業が持続可能な形で成長し続けるための転換をサポートする

――BIPROGYとしての今後の展望をお聞かせください。

増田:弊社はITを通してお客様の経営課題と社会課題を解決していくことが使命だと考えています。先ほどご紹介したパーパスのもと、持続可能な形で、お客様とともに半歩先のサービスを作り続けます。
デジタラトリエに関しては、EC通販業界の課題解決を通じて、お客様とともに成長し、業界全体の発展に貢献していくことを目指しています。機能についても、プロダクトアウトとマーケットインの両面からサービスを進化させていきます。
我々は単にサービスを提供するだけでなく、お客様のパートナーとして一緒に課題を解決していきたいと考えています。時にはお客様の実現したい内容に対し、運用観点からアドバイスをすることもあります。これは、持続可能なビジネスを実現するためには必要なことだと信じています。

――「2025年の崖」に直面する企業へのメッセージをお願いします。

増田:「2025年の崖」は急速に迫っており、躊躇している時間はあまりありません。多くの企業はIT面の変革だけでなく、人事制度改革など他の領域も含めて総合的に取り組む必要があります。経営者の方々には、社内で危機感を共有し、さまざまな部署を巻き込んで対策を講じていただきたいと思います。
強調したいのは、「2025年の崖」は日本企業が持続可能な形で成長し続けるための転換点であるということです。今回の変革を機に、より強く柔軟な企業体質を築いていくことが重要です。ぜひ一度、ご相談いただき、私たちの解決策や既に導入いただいているお客様の声をお聞きいただきたいと思います。

インタビュイー紹介

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BIPROGY株式会社

インダストリーサービス第一事業部
営業二部部長
増田 勇二