アパレル、寝具、システム。多業界に共通するマーケティングのあり方とは? 若手マーケター座談会【前編】

「マーケティング」という言葉は広義で、業種や業界によってその方法も実態も大きく異なります。特に若手マーケターにとって、自社の社風や歴史を踏まえ周囲の理解を得ながら新たな施策を打ち出していくことは難易度が高く、悩むことも多々。今回はそんな若手マーケターがざっくばらんに悩みややりがいを共有しあい、取り組みのヒントを得ることを狙いとし、座談会を実施しました。株式会社ビームス 岡村 拓哉氏、株式会社パル 宮川 広士氏、西川株式会社 辻谷 芽生氏と、BIPROGY株式会社 島田 佳奈の4名が集まり、前編では各社のマーケティングの特徴ややりがいについて語り合いました。

後編「商材や施策は異なれど、マーケティングには『熱量』や『泥臭さ』が欠かせない 若手マーケター座談会」はこちら

背景の異なる4人、それぞれのマーケティングとの出会い

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コミュニティ運営、CRM、販促・・・多岐にわたるマーケターの職務

――それぞれ自己紹介をお願いします。

島田佳奈(以下、島田):BIPROGY株式会社の島田と申します。新卒3年目です。現在の業務はECシステムプラットフォーム『OBD(Omni-Base for DIGITAL'ATELIER)』の適用をしています。
他にもオンラインコンテンツの制作、プロモーションに関する活動などをしています。入社1年目に、OBDのプロモーションサイトのリニューアルに携わったことが、マーケティングに関わるきっかけになりました。

辻谷芽生氏(以下、辻谷):西川株式会社の辻谷です。新卒で2021年に入社し、今年で4年目です。入社後は約1年間店頭に立ち、その後約1年間は営業に携わりました。その後マーケティング戦略部に移り、主にSNSやコーポレートサイト、そして「みんなの眠ラボ」というコミュニティサイトの運営をしています。

宮川広士氏(以下、宮川):株式会社パルの宮川です。パルに入社し、現在3年目です。現在はウェブ事業推進室で、CRMの領域とBIツールのダッシュボードの作成をメイン業務としています。
前職でもアパレルのECやCRMのシステムに携わっており、パルに入社したのは、SNSを活用した先進的な訴求力に魅力を感じたからです。新しいツールや情報を取り入れる際のスピード感も自社の強みだと感じています。

岡村拓哉氏(以下、岡村):株式会社ビームスの岡村と申します。僕はアルバイトとして2019年に入社し、2020年に正社員となりました。2021年から現在まで商品販促の部署で、主にレーベルとアイテムのプロモーション、マーケティングを行っています。
以前アルバイトとしてビームスに勤めるかたわら、縁あってスタートアップを対象にしたマーケティングの会社の仕事をお手伝いした経験があります。それをきっかけに、ビームスでもマーケティングを通じて新しいことを作り上げていけたらいいなと漠然と思っていたところ、たまたま現在の部署に社内公募があり、異動して今に至っています。

顧客の声をどう捉え、どう活かすのか。各社のユニークなマーケティング戦略

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――各社、マーケティングにおいて特徴的な取り組みはありますか?

島田(BIPROGY):BIPROGYにはグループマーケティング部という横軸の部隊があります。新しい技術や商材の紹介、スタートアップ企業との勉強会など、現場メンバーが新しい技術をキャッチアップするための部隊で、調査なども依頼できます。

宮川(パル):パルには現在50以上のブランドがありますが、各ブランドに「デジタルSV」という役職を配置しています。これは数万人規模の個人のインフルエンサーを束ねてモチベートしたりそれぞれの投稿内容にアドバイスしたりしながら、目標値を達成することをミッションとした役職です。
パルではSNSに力を入れており、インフルエンサーのフォロワー数やSNSから流入した売り上げを数値化し、インセンティブにつながるSNS収益システムを採用しています。SNSのみを担う役職は特徴的で、他社にはあまりないかもしれません。

岡村(ビームス):レーベルの数や取り扱いの幅広さはビームスの強みの1つですが、担当する役割も細分化されています。例えば情報を発信するにしても、フェスの協賛案件やバーチャルマーケットなど、会社が起こすコトのプロモーション部隊もいれば、各レーベルやアイテムのプロモーション部隊もいます。

辻谷(西川):現在nishikawaでは、コミュニティサイト運営を行っています。コミュニティでは実際にファンの方々と会い、商品開発なども行います。先日はコミュニティメンバーを対象に、10種類のマットレスを寝比べするというマットレスの体験会を行い、実際にユーザーの声をお聞きしました。そういった機会はとても刺激になりますが、皆さんはお客様の声を聞く機会はどのように設けていますか?

岡村(ビームス):接客に関するリアルな声は、例えばレシートに記載したアンケートからデータを取り、店舗ではそれを朝礼で共有しています。また上位顧客向けには、新商品のプレビューイベントを行っています。本社にお客様をお呼びし、新商品に実際に触れて先行予約していただけるというものです。

宮川(パル):パルでもEC購入者にアンケートを実施しています。また年2回ある「パルクロウィーク」というキャンペーン期間には、店舗での購入者にもNPSアンケートを実施しています。ですが、結局のところSNSの存在が大きいですね。接客だけではなく商品に関しても、サンプルの段階から「この色とこの色、どっちがいいですか?」などとスタッフインフルエンサーがSNSを通してフォロワーの声を汲み取り、それを活かして企画やアイテムを打ち出しています。

島田(BIPROGY):BIPROGYはBtoBですので少し毛色が違うかもしれません。オフラインイベントを定期的に開催し、既存顧客や新規顧客との接点を設けています。また「お客様のお客様」となるエンドユーザーの声を集めるためには、例えばアプリストアのレビューから生の声をチェックするようにしています。

社風、カルチャーをベースに展開されるマーケティング施策

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定性的な「感覚」も尊重しつつ、「データ」や「数値」で根拠を示すことの意義

――マーケティングのやりがいをどのように感じていますか?

島田(BIPROGY):BIPROGYは2年半前に日本ユニシスから社名変更したため、現社名の知名度は、それほど高くありません。そのため、自社イベントの開催や外部カンファレンスへの参加などを通じて、少しずつ「BIPROGY=日本ユニシス」と認識してもらっています。社名だけでなく、商材名の知名度が上がったと感じる時にはやりがいを感じますね。

辻谷(西川):コミュニティサイトやSNSで、座談会やインスタライブを通じ、お客様の実際の声を聞くことに一番やりがいを感じます。先日、お客様とコミュニケーションしながら、素材選びからサイズまでイチから毛布を作り、使っていただくという企画をしました。
そのような企画は初めてだったのですが、行ってみると他部署から「うちの課でもやってみたい」などと声が挙がりました。ユーザーコミュニティでどんなことができるのか、普段から他部署にうまく伝える難しさを感じている一方で、こういった声があると、社内マーケティングの視点でもコミュニティは効果的なのだなと感じます。

宮川(パル):販売経験があるからこそ思うのは、店頭販売はEC販売に比べると感覚的な部分があるということです。「このアイテムは結構売れているな」とか「これはあの年代層が買うだろうな」など、数値に基づかない感覚は、むしろ現場では重宝されますし、その感覚を持てるようになることを正とする文化が、特にアパレル業界にはあるかもしれません。
しかし、デジタルツールやデータを活用し、「数値」として捉えるようになると、「感覚値と実際の数値がまったく違った」ということもよくあります。数字を分析することで新たに見えてくることもありますから、きちんと数字で見ることの大切さを感じますね。
SNS運用も感覚で行うのではなく「こういう反響や収益が立っているから、これが正しい方法だ」と数値データに基づいて進めていく。それがマーケティングの難しくも面白いところです。

岡村(ビームス):僕は、仕掛けた企画がバチッとはまった時にやりがいを感じます。ビームスにはレーベルごとの強みや伸ばしていきたい点、会社としてそのレーベルに求める役割などがあり、その解決のためにいろいろな仕掛けを考えます。
その中でビームスが大事にしていることの1つが「ノリとロジック」です。先輩たちが築いてきたビームスの良いところや定性的な観点を引き継ぎつつ、定量的な数字の根拠やロジックを紐付ける。そうして考えて打ち出した施策や企画に対し、メディアや店頭での良い反応が得られると嬉しいなと思います。

インタビュイー紹介

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株式会社ビームス

マーケティング本部
宣伝販促部
販促課プレス
岡村拓哉さん

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株式会社パル

Web事業推進室
宮川広士さん

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西川株式会社

イノベーション・マーケティング戦略事業部
マーケティング戦略部
広報・広告担当
辻谷芽生さん

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BIPROGY株式会社

インダストリーサービス第一事業部
営業二部
コマース&サービス営業所
コンサルタント
島田佳奈

後編「商材や施策は異なれど、マーケティングには『熱量』や『泥臭さ』が欠かせない 若手マーケター座談会」はこちら