ユナイテッドアローズがOMO戦略を加速させるために「デジタラトリエ」を選ぶ理由

木下 貴博氏
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ユナイテッドアローズ

EC開発部 部長
木下 貴博氏

ファッションに多少なりとも関心を持つビジネスパーソンには、もはやユナイテッドアローズを説明する必要はないだろう。1989年の創業以来、多様なコンセプトを持つ複数のブランドやレーベルを展開し、幅広い年齢層から支持される国内最大手のセレクトショップである。コロナ禍を経て、洋服ですらネットでの購入をためらわない生活者が増えるなか、同社がOMO戦略*において新たに導入したソリューション、それがBIPROGYの「Omni-Base for DIGITAL'ATELIER(デジタラトリエ)」である。その理由や経緯について、同社のEC開発部を率いる木下氏に話を聞いてみた。

*Online Merges with Offline(オンラインとオフラインの統合)

どんな変化があっても「感動提供」を磨き上げる

コロナ禍による逆風にさらされながらも、2022年3月期連結決算で早くも黒字転換を果たすなど大幅な利益改善に成功している株式会社ユナイテッドアローズ。いま会社はどのような方針を掲げているのだろうか。

「今年度の経営方針として掲げるスローガンは【感動提供 すてきな接客 すてきな商品 ヒトのチカラ モノのチカラ】です」と木下氏は語る。「当社の経営目標は、お客様価値を起点にすべてのステークホルダーの価値をバランスよく高めること。社会が急速に変化し、当社を取り巻く環境も大きく変わる。それでも長く培ってきたことや大切にしてきたことが流されてはいけない。どんな変化があっても【感動提供】を大切にしてきたからこそ現在のユナイテッドアローズがある。この絶対的な強みをもう一度磨き上げ、未来につなげることを忘れてはいけないと考えています。」

リアルとWebを越えた「繋ぎ目のない購買体験」を

ユナイテッドアローズが【感動提供】を磨くために推進している重要なテーマのひとつが「繋ぎ目のない購買体験」だという。木下氏がこんな例え話をしてくれた。「お客様が私たちのSNSを見て商品に興味を持ち、オンラインストアに来てくださったとします。そこではリアル店舗の在庫も確認できて、自分がよく行く店に『残りわずか』とある。ところが週末にそのお店でいくら探しても目当ての商品が見つからないようなことがあります。」ーーなるほど、これは実際に経験したことがある方も多いのではないだろうか。

「あるいは、お店でスタッフからおすすめの商品を紹介され、その場では買わなかったものの帰り道で気になってスマートフォンで検索したのにその商品が見つからない...といったこともあるでしょう。私たちはさまざまなチャネルで顧客接点を提供していますが、ひとつひとつの繋ぎ目を跨ぐたびに、前回したことが無効化されたり忘れられたりする。これはお客様にとってたいへんなバッドエクスペリエンスです。こうした"繋ぎ目のある"購買体験をいかになくすかに取り組む必要があるのです」と木下氏。まさにオンラインとオフラインを統合したシームレスな体験デザインこそが、CX向上や新たなファン獲得のために不可欠になっていることが窺える。

  • UNITED ARROWS ONLINE
  • ユナイテッドアローズ 有楽町店(同社Webサイトより)

一度の買い物で受け取れる価値を最大化する

さらに、同社がもうひとつ重点的に取り組んでいるテーマとして、木下氏から「顧客受取価値の最大化」というキーワードを挙げていただいた。そこには、服を販売するセレクトショップならではの考え方があるようだ。

「たとえばヘアカットなら、サービスを受けてお店を出る瞬間にほぼすべての価値がお客様に還元されていますね。でも服はお買い上げいただいた時点で終わりではない。その服がお客様の日常にどう貢献するか。どれだけお客様の生活に彩りを添えられるか。そのひとつひとつが紡ぎ上げる体験までを含めて受取価値の総和になるわけです。お客様が1回の購入で得られるリターンを最大化するために、私たちにはもっとできることがあると考えています。」

確かに、服を買うときはあれこれ選んで迷うところから楽しみがはじまり、購入する瞬間の満足はもちろん、後日それを身にまとって出かけるときの新鮮な気持ちや高揚感、快適な着心地などにも私たちは価値を見出している。木下氏が語る理念は"より多くのお客様に自分らしい装いやこころ躍るお買い物体験をお届けできるよう"という同社のステートメントの一節を体現していると言えよう。

(同社Webサイトより)

成長とともに見えてきた課題

自社ECサイト「UNITED ARROWS ONLINE」だけで年間売上が約100億円に達するユナイテッドアローズ。ほぼゼロからECをスタートしてここまで急成長を遂げてきたのは、基幹システムの開発・運用を担当したビジネスパートナーの功績も大きかったという。その間に2度のリニューアルを重ね、自社で初めてスマートフォンアプリもリリースした。それでも重大な課題が浮かび上がり、将来を見据えて新たなパートナーを模索することになったという。

「ひとつはスキームの課題です。お客様は複数のチャネルを使い分けてひとつのお買い物をするようになりましたが、従来のシステムではどうしても終着点としてECサイトが受け皿になる構造で、これが今後やろうとしていることの足枷になっていました。また、注文受付から発送までのプロセスを迅速・正確・ローコストにこなしてくれるサービスはこれまでの急成長を支えるために最適でしたが、私どもとしては、たとえば自社のオンラインストアでも実店舗と同様にお客様の気持ちが伝わる繊細なギフトラッピングをしてお届けしたい。効率にプライオリティを置くサービスとはどうしても折り合いがつかない部分がありました。もうひとつはシステムの限界ですね。10年にわたってプラットフォームに増築を重ねてきた結果、今後のボトルネックになる状況が顕在化してきました」と木下氏は振り返る。

「ノンカスタマイズ」が実現したスピーディなデリバリー

こうした課題を解決するためにユナイテッドアローズが新たに導入したのは、BIPROGYが提供するSaaS型のコマース事業基盤「Omni-Base for DIGITAL'ATELIER(デジタラトリエ)」。ネットと店舗に限らずすべてのチャネルを通じて販売活動を支援する統合販売管理システムサービスである。受注から出荷までのEC・通販システム機能、入荷から販売までの店舗システム機能の提供はもちろんのこと、コマースビジネスに精通したIT要員によるシステム運用サービスも提供する。

なかでも木下氏が最もメリットを実感したのが「ノンカスタマイズ」のコンセプト。デジタラトリエは業務に合わせたシステムカスタマイズは行わず、すでに完成されたシステムに合わせて業務をブラッシュアップすることでシステムの開発・運用コストを削減するソリューション。システムインテグレーションではなく、サービスだからこそ実現可能なシステム構築である。これによりユナイテッドアローズは自社物流センターにフルフィルメント拠点を置き、各種サービスレベルの改善を通じた顧客体験価値の向上を図っている。

「相当な短時間でスタートtoエンドを駆けぬけてデリバリーすることができました。この時間軸でローンチに辿り着けたのはノンカスタマイズのコンセプトが刺さったということでしょう」と木下氏。さらに、追加費用をかけずに最新機能が利用できる「無償バージョンアップ」、IT・業務の両面からお客様を理解し、情報システム部の一員として支援する「アウトソーシング」についても今後大いに期待しているという。

両社のハイブリッドでさらなる成果をかたちに

順調な滑り出しに成功したユナイテッドアローズとBIPROGYのパートナーシップ。新システムにリプレース後は、サイト表示速度などの基本スペックを向上させるとともに、検索機能の改善、カート投入から決済までのステップ短縮などでユーザビリティを高めている。

木下氏に今後の展望を聞いてみた。「先ほど申し上げたとおり、繋ぎ目のない購買体験をいかに最短・最速で作り上げるか。さらに、顧客受取価値を最大化し、お客様が商品を購入する先まで寄り添ってひとつひとつの投資をどれだけ大きな成果に結びつけられるかにチャレンジしたい。当社の努力とBIPROGYさんのサービスをどうハイブリッドするかで成果は1にも10にもなります。ぜひこれまで以上の力をお貸しいただき、あらためて成果を報告させていただきたいと思います。」

両社のパートナリングは、まだ結ばれたばかりである。"すべてはお客様のためにある"を社是に掲げるユナイテッドアローズとコマース体験を変革するデジタラトリエの組み合わせがどんな相乗効果を生み出すか、これからも目が離せそうにない。

  • *DIGITAL'ATELIERは、BIPROGY株式会社の登録商標です。
  • *Omni-Base(オムニベース)は、株式会社ワールドの商標です。詳細はこちら
  • *その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。