EC担当者が押さえておくべき「最新のECトレンド」とは?
- 2025.04.07
- EC

EC市場は急速に成長して消費者の購買行動も大きく変化しており、スマホの普及やSNSの活用が進んで実店舗とECの両方を運営する企業も多くなりました。さらに、AIやメタバースなどの新技術が登場し、企業は常に最新のトレンドをキャッチする必要があります。
しかし、変化が激しいからこそ「何に注目すべきか分からない」と悩むEC担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、今押さえておくべきECのトレンドと企業が実施すべき施策について詳しく解説します。
ECを取り巻く環境の変化
新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活様式に大きな変化をもたらしました。外出自粛やリモートワークの普及で消費者の購買行動も大きく変化し、結果としてEC市場は急速に拡大しました。企業の売上や利用者数も増加しています。本章では、ECを取り巻く環境の変化について8つの視点から詳しく解説します。
スマホの利用向上によるECの普及
スマートフォンの普及と技術の進歩により、消費者はいつでもどこでもインターネットにアクセスできるようになりました。そのため、従来よりもECサイトへのアクセスが容易になり、利用者数が急激に増加しました。
特に、新型コロナウイルスの影響で外出が制限される中、スマホを活用したオンラインショッピングの需要が急増し、EC市場を大きく拡大させ、多くの企業がオンラインでの販売に力を入れるようになりました。
実店舗とECの相互利用
従来は実店舗のみで販売を行っていた企業も、ECサイトを立ち上げることで顧客との新たな接点を持つようになりました。そのため、オンラインとオフラインの両方で顧客とのコミュニケーションを図る必要性が高まっています。
例えば、オンラインとオフラインの連携を高める施策としてECサイト・アプリで商品を注文し、店舗で受け取るサービスを多くの企業が採用しています。実店舗とECの相互利用を進めて顧客の利便性をあげ、顧客体験の向上を目指すことが最近のECにおけるトレンドです。このようなオンラインとオフラインの融合をOMOといい、「OMOマーケティングとは?アパレル業界で注目される理由を解説」などで詳しく解説しています。
販売形態の変化
今まで主流であったB2CやB2Bに加え、D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる新しい販売形態が増加しています。D2Cはメーカーやブランドが直接消費者に商品を販売するビジネスモデルで、卸先や小売店などの中間業者を介さないため、価格競争力や顧客との直接的な関係構築が可能です。
D2Cなどの販売形態の多様化で、消費者はより多くの選択肢を持つようになり、EC市場における競争も激化しています。なお、D2Cに関しては「D2Cとは?B2C・B2Bとの違いやメリット・デメリットを解説」の記事でも詳しく解説しています。
AI/ARなどの技術の発展
AI(人工知能)やAR(拡張現実)などの技術の進歩により、ECサイトでの新たな顧客体験を可能にしていることも現在のECにおけるトレンドです。例えば、AIを活用したレコメンド機能やチャットボットによるカスタマーサポート、ARを利用したバーチャル試着などを導入する企業が増えています。AIやARの技術は消費者の購買体験を向上させ、ECサイトの利用促進に寄与しています。
SDGsへの取り組みに関する顧客の関心の高まり
環境保全や社会的責任に対する意識が高まる中、消費者は企業のSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みに注目しています。そのため、ECにおいてもエシカル消費やサステナブルな商品への需要が増加しています。
環境に配慮した商品開発などSDGsに沿った取り組みを行い、消費者からの信頼を獲得して競争力を高めるのが現在のECにおけるトレンドです。なお、SDGsへの取り組みに関しては「アパレル・ファッション業界におけるSDGs 具体的な取り組みや事例を紹介」の記事でも詳しく解説しています。
ID決済の普及
ID決済とは、ユーザーが一度登録したIDやパスワードを用いて複数のECサイトで簡単に決済を行える仕組みです。ID決済で毎回の個人情報やクレジットカード情報の入力が不要となり、ユーザーの利便性が大幅に向上しました。
例えば、PayPayや楽天ペイ、Apple PayなどがID決済として多くのECサイトで利用されています。ID決済はECサイト運営者にとってもメリットがあり、カゴ落ち(購入途中での離脱)の防止やコンバージョン率の向上に寄与します。
ただし、ID決済導入には決済手数料やシステム対応などのコストが発生するため、費用対効果が合うかなど事前の検討が必要です。
クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の重要性の高まり
ECサイトの拡大に伴い、クレジットカード情報の漏えいや不正利用のリスクが高まっています。クレジットカードの情報漏えいや不正利用のリスクに対応するため、セキュリティ対策の強化がEC事業者にとって急務です。具体的な対策として、決済時に追加の本人認証を行って不正利用を防止する仕組みである3Dセキュアの導入が挙げられます。ECサイトでは2025年3月末までに、SMSやアプリケーションを使用するワンタイムパスワードを利用して認証を行う3Dセキュア2.0を導入することが義務化されました。
また、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)への準拠を進める企業も増えています。PCI DSSはクレジットカード情報を取り扱う企業が遵守すべきセキュリティ基準であり、基準に従って適切な対策を講じると情報漏えいのリスクを低減できます。
さらに、フィッシング詐欺やマルウェア対策として最新のセキュリティソフトウェアの導入や従業員へのセキュリティ教育も欠かせません。
クラウドECでのECサイト構築が普及
従来、ECサイトの構築は自社サーバーを用いるケースが一般的でしたが、近年ではクラウドサービスを利用したECサイト構築が普及しています。クラウドECのメリットとして、「初期投資を削減できる」「ECサイト構築後も拡張性しやすい」などが挙げられます。
特に、小規模な事業者やスタートアップ企業にとってクラウドECはコストパフォーマンスに優れた選択肢です。また、クラウドサービス提供者がセキュリティ対策を講じているため、個別に行う手間が省ける点も魅力です。
ECトレンドに合わせてEC担当者が取り組むべきこと
近年、EC業界は急速に進化しており、多様なトレンドが生まれています。これらの変化に対応するため、EC担当者には柔軟かつ戦略的な取り組みが必要です。以下に、最新のトレンドに合わせてEC担当者が注力すべきポイントを解説します。
新しいチャネルの情報収集
1つ目は、ECにおける新しいチャネルに関する情報収集です。従来のWebサイトだけでなく、SNSやメタバースなど新たなEC販売チャネルが数多く登場しています。例えば、近年ではSNS上でのショッピング機能が充実しており、ユーザーはプラットフォーム内で直接商品の購入が可能となりました。
また、メタバース内での仮想店舗やイベントを通じて、ユーザーに新しい購買体験を提供する企業も増えています。これらの新興チャネルを効果的に活用するためには、最新の情報を常に収集して柔軟に戦略を立てなければなりません。
メタバースについては「メタバースECとは?注目される理由やそのメリット、活用事例を紹介」の記事で紹介しています。
集客の強化とリピーターの増加への取り組み
EC市場の競争が激化する中、効果的な集客とリピーターの確保が重要です。具体的には、SEO対策やSNSマーケティングを駆使して新規顧客を獲得し、メールマガジンやポイント制度でリピーターを増やす施策が求められます。
また、パーソナライズされた商品提案や迅速なカスタマーサポートを提供して顧客満足度を高め、継続的な利用を促進するなどの取り組みも必要です。
なお、ECでの集客・リピータ確保につながる施策については「ECマーケティングとは?集客と売上アップに効果的な施策を紹介」の記事でも詳しく解説しています。
生成AIなど新しい技術の活用への取り組み
生成AIなど新しい技術の活用への取り組みも、今後のEC事業には必要です。生成AIの進化により、コンテンツ制作やカスタマーサポートの自動化が進んでいます。例えば、AIを活用して商品説明やブログ記事を生成し、効果的なマーケティングを展開する企業が増加しています。
また、チャットボットによる24時間対応のカスタマーサポートも可能となり、顧客満足度の向上を効率的に図っている企業も多いです。ただし、生成AIには著作権やデータプライバシーの問題も存在するため、リスクを十分に理解して適切な対策を講じる必要があります。
関連記事: ECサイトのAI活用法。生成AIを導入して売上アップを目指そう
セキュリティ対策の強化
ECサイトは多くの個人情報を扱うため、セキュリティ対策は不可欠です。具体的には、不正アクセスを防ぐためのファイアウォールやWAF(Web Application Firewall)の導入、3Dセキュアなどの本人認証強化が求められます。さらに、定期的な脆弱性診断やソフトウェアのアップデートを実施し、最新のセキュリティ状態を維持する必要もあります。
関連記事: ECサイトのセキュリティ・脆弱性対策が重要な理由と対策方法を解説!
移り変わりの早いECトレンドをキャッチし、施策に生かしましょう
EC市場は新型コロナウイルスを経て拡大し、スマホの普及や技術の進化により変化を続けています。実店舗との融合やD2Cの増加、AI・ARの活用、SDGsへの関心の高まりも注目すべきポイントです。
また、SNSやメタバースなど新たな販売チャネルの活用、集客やリピーター施策、生成AIを活用した業務効率化も重要になります。さらに、セキュリティ対策を強化して信頼できるECサイトを構築することも不可欠です。ECトレンドを素早くキャッチし、自社のターゲットに最適な販売戦略を立ててECでの売上拡大を実現しましょう。